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自動車用エアコンの可変容量(能力)コンプレッサについて

昔の家庭用エアコンはコンプレッサの仕事能力が一定であったため、設定温度に達した後は、コンプレッサのON-OFFを繰り返し、特に起動時の騒音、振動等に問題があった。近年、インバータ制御が一般的になってからは運転能力は必要に応じて多段階(無段階)に変化するようになり、コンプレッサのON-OFFの回数は激減し、快適でしかも経済的に生活できるようになった。

しかし自動車用エアコンはエンジンを動力にするものが一般的であるため(いずれ電気式が普及するかも)、その運転能力はエンジン回転数に依存する。そして、その回転数で持てるパワーを100%出すことしかできない(ものが多い)。真夏にエンジン回転が低い(アイドリング等の)ときでも冷たい風が出るよう、割合に速くコンプレッサを回すようプーリー比は設定されている。エンジンが高回転になると、コンプレッサも高い能力を発揮するが、その分エンジンパワーも食われることになる。

通常オートエアコンでは室温が設定温度より遥かに高いときにはその能力を全部使って冷たい風を作り出す。しかし、室温が設定温度に近づくにつれ、冷たい風をつくる必要がなくなってくると、オートエアコンは生成した冷たい空気をエンジン冷却水(80〜90℃)に当てて温風に変えるという作業を行うようになる。つまり、コンプレッサが100%の能力を使って生成した冷た過ぎる風をわざわざエンジンの熱で暖め直すというもったいないことが日常的に起こっているのである。この状態ではエネルギーの無駄が多いのは誰にでも分かることで、当然燃料を余計に消費してしまう。そこで、この無駄をできるだけなくそうとしてコンプレッサのON-OFFをこまめに繰り返す設計にすると、エンジン負荷の変化によるショックを頻繁に感じる不快なドライブになる。

自動車用エアコンのコンプレッサ能力も家庭用エアコンのように変化させることが可能であれば、一定の室温を保つために必要な能力だけを発揮させればよく、効率を高めることができる。コンプレッサが「ON」の状態を長く保つことができると、エンジンパワーの変動をあまり感じることなく安定した快適な走りができ、燃費も良くなるのである。昔は2段階に容量を変化させられるコンプレッサがよく使われていた(例:EP82)が、最近は無段階に能力を変化させられるコンプレッサがDENSO(豊田自動織機)やサンデンなどから販売され、普及し始めている。しかし原価が高いためか比較的高価な乗用車にしか搭載されていない。本来ならエアコンに食われるエネルギーの割合が高くなる小排気量エンジンのクルマにこそ搭載すべきであるが、コストを回せないのだろう。トヨタ車では、UZ、JZ、AZエンジン車に搭載されている。

UZ(V8 4.3L、4.0L):セルシオ、クラウン

JZ(直6 3.0L、2.5L):クラウン、プログレ、ブレビス、マークU等

AZ(2.0L D-4):プレミオ、アリオン

可変容量コンプレッサの原価が安くなったのかどうか分からないが、トヨタは ist に連続可変容量コンプレッサを搭載した。小型車は走行効率の良さが「売り」なので、正しい選択だと思う。カタログ上のみならずエアコンONの実走行で燃費や走りが良いことを重視するトヨタの姿勢は評価できる。

外国車にも日本製の可変容量コンプレッサを採用するものが多い。Audi、BMW、Mercedes、VWの乗用車の多くに豊田自動織機の連続可変容量コンプレッサが使われている。

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