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M/C 前

V6 3.0

EXCLUSIVE

5ドアハッチバック

シトロエンジャポンが2002年4月に設立されて販売拠点が増加し、シトロエンが身近な存在となった。フェアの案内が来たため、世田谷の店に行ってみた。

C5は4.62m×1.77mの大きさの中型車で、406、A4、Passat、3er、C-Class、X-type、VECTRA、MONDEO、S60、156などの強豪がひしめくカテゴリーに属している。エンジンは直4の2.0LとV6の3.0Lの二本立て。ライバルと比べてどうなのか、V6搭載車に乗って確かめてみた。

このクルマの特徴は、なんといってもこだわりのハイドロニューマチック(ハイドラクティブV)が備わっていることである。その乗り味は独特で、路面からの情報は伝わるのに、乗り心地は宙に浮いた感じでフワッとしており、ショックを感じさせないものであった。誰かが言っていた「羊水に浮かぶ赤ん坊が同じように感じているだろう」という喩え話は的を射ているかもしれない。このフワッとした乗り味は、バネレートが極端に低いことにより醸し出されているようである。それは、リアゲートを開けてバンパー部分に座って体重を掛けると7〜8cmも沈み込んだことから確認できた(いったん沈んでから油圧で戻ってくるのが面白い)。体重と変移量からバネレートを計算してみると両輪で約1kg/mm。ということは片輪だと0.5kg/mmとなる。一般的な車両では1.5〜2kg/mmなので、1/3〜1/4の柔らかさということになる。

エンジンは3.0L、トランスミッションはZF製の4段ATでティプトロ付き。プジョー406のV6モデルとエンジン・ミッションは同じである。低速走行主体の街乗りでは、低回転域のトルクが充分あり、走らせやすいが、シフトアップがなかなか行われないのはプジョーと同じく違和感として感じられた。日本車に慣れた感覚では、「燃費を良くするために早くシフトアップして欲しい」と思ってしまう。しかしこれはフランス流のセットアップらしいので、言っても仕方ないのかもしれない。フルスロットル時の反応は、エンジン回転が非常にスムーズで、シフトチェンジもショックがなく、よく出来たものであった。ただし、ギアレシオが高めに設定されている影響を受けて3.0Lの排気量の割りに力強さはあまり感じない。レガシィ3.0L(BHE)と比べて若干おとなしいと感じた。

シートはソフトに沈み、短時間の乗車では快適であった。着座位置は上下できるが、最下位ではダッシュボードが高めなので見晴らしは良くない。しかし、必要に応じて高くできるため問題はないだろう。3.0Lモデルだけは座席のスライド、リクライン、高さ調整、ランバーサポート調整が電動で行えるので快適である。エアコンの温度調整は左右独立で設定できるのも良い。荷室は全長4.6mのクルマとしては広大である。その分、リアシートの足元の余裕は少なくなっているが、そんなに狭いわけではない。外観はセダンのように見えるが、5ドアハッチバックなので、リアシートを前に倒すことが可能(6:4分割)で、荷室はさらに広げられる。バカンスを楽しむ国のクルマという感じである。

M/C 前

2.0

5ドアハッチバック

C5の2.0Lモデルを試すために茨木の店を訪問した。ハイドラクティブVはV6モデルと同様に備わる。

V6は交通量の多い甲州街道とその裏通りで試乗をしたが、今回は交通量の少ない幹線道路で乗ってみた。

広い道に出るまで、クルマを温めながらゆっくり走ると、ATのダウンシフト制御がやや気になったが、これまでプジョーで感じたような違和感は減っていた。

幹線道路に入って交通の流れに乗って普通に走っていると、ATのシフトアップタイミングが少し遅いなと思う程度で、すぐに慣れてしまい、赤信号で減速した際のダウンシフトも適切だなと思えるようになった。ギア比は取り立てて高くはなく、80km/hで2000rpmぐらい。静かに快適に移動ができる。ハイドラクティブはとても滑らかに路面を捉え、乗員に優しい。

加速性能を確かめるため、Tipシフトで2ndギアを選択して80km/hからスロットルを全開にしてみた。V6より明らかに力がないが、2.0Lとしてはこんなものだと思う。

このクルマはシートと脚が良く、とにかく快適性が高い。輸入車にどのような価値を求めるか、人それぞれであるが、ありきたりのクルマが嫌というのならシトロエンC5は面白い選択かもしれない。

M/C 後

V6 3.0

EXCLUSIVE

5ドアハッチバック

2004年末、C5がマイナーチェンジし、鋭い目つきの新シトロエン顔になった。それに伴い、車体が少し大きく(全長は+120mm、全幅は+10mm)なった。このM/Cにおける一番の目玉は3.0Lモデルに搭載された6段AT(アイシンAW)である。これはプジョー407と共通で使われるもので、アイシンの6段ATの外車搭載例がどんどん増えている(PSA、VW/Audi、フォードなど)。

本日は試乗車が供されて2週目の週末であったため、どうやら客が少なかったようである。おやつ時に訪問したのに本日最初の試乗となり、冷えたクルマを動かすことになった。

1分ほど暖機した後、ゆっくりと走って暖めることにした。少し走って渋滞にはまり、ちょうど良かったのであるが、それなのになかなか水温計や油温計が上がらず、ATは低油温状態で作動させることによると思われる硬質なショックが少し感じられた。このAT、Dレンジでブレーキを踏んで停止していると自動的にトルコンの結合を緩めるニュートラルコントロールが付いているようで、ブレーキを離した次の瞬間に再結合のショックが強く出ていた。アイドリング回転が高くなっていたのか分からないが、クリープ力が強く、再発進時のショックが大きくてあまり快適とは言えなかった。

しばらく走って70km/hぐらいで流れる幹線道路に出ると、C5はなかなかスムーズに走ってくれた。6段ATのギアが現在どのポジションにあるのかは、Tipシフトのほうへセレクタを動かさないと分からないが、従来の4段ATのように低いギアで引っ張ることがないので、あまり気にすることはない。スロットルを大きく開けて自動ダウンシフトをしながら加速してみると、従来型とエンジンは同じはずなのに、回り方がなんだか軽快になっているような気がした。ATの変更に併せてチューニングしたのだろうか。

ATにはノーマルのほかに S(スポーツ)と雪道の変速プログラムがあり、少しの間だけSモードで走ってみた。これはノーマル状態との違いがはっきりと分かる設定で、エンジンの回転を高い範囲で使用するようになっていた。また、100km/hに達しても5速ギアまでしかアップシフトせず、第五世代GOLF(アイシンAW 6段AT採用)と同じような制御がなされているのが分かった。6速ギアでは100km/hで2000rpmぐらいであった。C5はもともと速度感のないクルマであったが、M/C後モデルでも100km/h走行時の感覚は70km/hぐらいかと思うような静かで快適な走りを見せてくれた。

ハイドラクティブVもSPORT設定ができるが、今回は急カーブを激しく走るようなことがなかったので、切り替えても違いが分からなかった。

アイシンの6段ATを積むことによってC5の印象は劇的に良くなった。車両価格は値上がりして458.6万円(税込)になったが、外車の中ではそれほど高くないし、欧州価格ともかけ離れてはいないので、シトロエンの乗り味を試してみるのも面白いかなと思ってしまう。

M/C 後

2.0

Leather package

5ドアハッチバック

2.0のモデルは、エンジンにVVTを装着したところが新しい。ATは残念ながら従来どおり4段変速(AL4)である。ホイールサイズは15インチから16インチに変更され、ハイドロニューマチックのSPORTモードは廃止され、革巻きハンドルが標準装備されるというのが主な変更点である。

標準のファブリックシートは手動調節となるが、今回乗ったレザーパッケージ(27万円のオプション)では電動調節が可能となる。

動かしてみると、加速する方向ではATの制御が上手になされ、同じATを搭載するプジョーでみられるシフトショックや低速ギアで引っ張りすぎるような癖は感じられなかった。ただ、減速する方向では自動ダウンシフトが早めに起こり、少し違和感があった。M/C前モデルの試乗でも同じことを述べているので、実はあまりセッティングが変わっていないということになる。3.0Lの6段ATと比べると、やはり段数が少ないことによるギア比のステップの大きさが明確に感じられた。現在、世界のスタンダードとなりつつあるアイシン6段ATをどうして2.0Lに合わせなかったのか、とても残念でならない。

ハイドロニューマチックは相変わらず快適な乗り味を提供してくれた。うねりのある石畳の道を飛ばしてみても上下の振動はとても小さく、前走車(BGレガシィNA)よりも明らかに車体の揺れが小さいと思われた。

ブレーキは低速でチーチーと鳴き、欧州車であることを感じさせられた。気になる人はパッドを日本製に替えるとよい。

2.0と3.0は価格差は100万円近く(レザーシート仕様で比べると70万円ぐらい)ある。両車はエンジン&ミッションに加えてヘッドランプの意匠(HID/白熱)が異なるだけである。ということは、エンジン&ミッションで発生する差額はだいたい55万円ということになるだろうか。庶民にとってこの価格差は大きいが、最も重要な部品だけにどちらを選ぶか決断するのは難しい。

 

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