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A6

3.2 FSI

quattro

New A6 がシングルフレームのフロントグリルを携えて2004年9月に登場した。これからはこの手法で新しいAudiのイメージ作りをするのだろう。

車体はEクラスや5シリーズに外見で負けないよう、4915mm×1855mmというラージサイズになった。それに伴って、車重も1790kgという重量級に成長した。

エンジンラインアップは、A4や旧A6に使われてきた2.4Lの改良版、VWパサートの2.8Lや旧A6の3.0Lの流れを汲む3.2L FSI、ALL ROADやS4に載る短いV8を改良した4.2Lがある。試乗車のエンジンは3.2 FSIで、圧縮比はなんと12.5もある。直噴にすると燃焼室温度が下げられるので、こんなに高い圧縮比が実現できるのだろう。

New A6の3.2 FSI エンジンは、最近いろいろな車種に搭載されるVW-Audi自慢の狭角V6(VR6)3.2Lとは異なる。狭いバンク角の「VR6」はFWD車に横置きに搭載するのに都合が良いため、A3、TT、GOLF、BORAに使われている。そして、不思議なことに縦置きでもTouareg、Cayenneに使われる。幅広のV8を載せることが可能なTouaregやCayenneに幅の狭いVR6が使われる理由は分からない。ともかく、New A6のエンジンは従来型3.0Lのボアアップ版の3.12Lとなる。性能は、圧縮比を上げたのが功を奏して、255PS、330Nmという立派なものになっている(最高速度250km/hという)。トランスミッションはいまやこのクラスでは当然のように採用される6段ATである。

さて、ちょっと動かしてみた感想を述べると、まずはステアリングの異様な軽さに違和感を覚えた。電動パワステなので低速で軽く、高速で重くするようコントロールされるのであるが、あまりにも軽すぎ、また、切ったステアリングの戻りが悪いのも気になった。

街乗りをしたところ、車体の大きさはあまり気にならなかった。エンジンやトランスミッションの反応が良く、ステアリングが軽いため、クルマの重さや大きさを意識しないで済んだのだろう。ATにはTiptronicが備わるため、いつでもステアリング裏のパドルシフトで一時的な変速ができ、ちょっとしたエンジンブレーキを使うときに便利であった。乗り心地は滑らかなフィーリングを持っていたが、鋭いギャップを越えるときに発生するドタンという音がかなり目立ち、高級感を損ねていた。日本仕様のタイヤはドイツ仕様よりもサイドが薄いものを履かせているため、そういう現象が起こるのかもしれない(日本:225/50R17、ドイツ:225/55R16)。

駐車ブレーキは電気仕掛けで作動するものになり、これがなかなか有用なのである。通常はスイッチを引いてセット、押して解除という普通のレバーと同じようなロジックで使える。そして、急な坂で一時停止してフットブレーキなしでは後退するような場面では、何も操作しなくても自動的に後退を防いでくれるらしい。また、信号待ちのときにスイッチを引くと、フットブレーキを踏むことなくクリープを止めてくれるため、楽ができる。再発進の際にはスロットルを開けて加速力が発生すると、自動的に駐車ブレーキは解除されるので何もしなくてよい。さらに、走行中にフットブレーキを踏めない状態のときにスイッチを入れると、ABSを効かせて上手にクルマを急停止させる機能も備わっている。低速走行時に試してみたところ、確かにスムーズに急停止してくれた。

信号からの発進で前方に邪魔者がなかったため、フルスロットルでの加速を試してみた。エンジンはスムーズに素早く回転を上げ、V型特有の変な排気音も全然聞こえず、きれいに回ってくれた。速度の乗りはかなり良く、0→100km/hが7.1秒(BMW 530iと同じ値)というデータのとおり不満を述べる必要のない加速を見せてくれた。

ちょっとしたカーブのあるコースをATをSレンジにして走ってみると、最近のAudiらしい素直なステアフィールに好感を持った。最近のQuattroの制御がどのようになっているのかよく知らないが、AWDの割りにハンドルを切った状態でのセンターデフの抵抗がまったく感じられないのが不思議である。前後輪の差動を上手にコントロールできているのだろう。

残念ながら今回は低速での試乗に終始したため、New A6の魅力があまり感じられなかった。ドイツの高速道路が主な活躍の場であるA6は、それなりの速度域で走らせてやらないと評価ができない。

 

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