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A4

1.8T

quattro

Mercedes C-Class、BMW 3seriesと並ぶ小型セダンの本流の中で、まだ乗っていなかったのがA4である。AUDIといえばクワトロを一番にイメージしたので、1.8Lターボの4WDを試してみた。

1.8Lターボエンジン(縦置)は従来のモデルと同じものだと思うが、日本仕様のトランスミッションは5段AT(Tiptronic)のみになり、MTは消えてしまった。マニュアル派にとっては寂しい限り。AUDIのターボエンジンは低速トルクを重視した設定がなされ、出力は僅か170PSに過ぎない。トルクも22.9kgmしかないが、広範囲にわたってフラットなため、とても実用的に仕上がっている。走ってみても、ターボラグはほとんど気にならず、ややレスポンスの鈍いNAエンジンというフィーリングで重いA4を引っ張ってくれる。ただし、活発ではないので、クワトロと聞いてスポーツ4駆を期待していたら完全に裏切られてしまう。過給音は聞こえなかったが、エンジン自体の音は結構うるさいと思った。

Tiptronic は、街中の低速走行では「単なる5段AT」に過ぎなかった。ステアリングホイールに付けられた+−スイッチでUP-DOWNは自在であるが、Gセンサーなどの制御を感じ取ることはできなかった。感じられたのはシフトショックが少ないということぐらいである。本当のTiptronicの良さを感じられる試乗をしてみたいものである。

遅れ馳せながら今回の試乗で最も強く感じたのは、車体のしっかり感である。ドアを閉めて走り出すと、車内は厚い壁に囲まれているような安心感とともに何ともいえない重厚感が漂う。こんなクルマは初めてである。Cクラスも重厚な感じはしたが、それは鈍重さを大いに含んだものであり、雰囲気は異なる。この大きさで1620kgという重さなので、それなりに鉄が多く使われているので当然の結果ではあると思うが、A4で感じられる安心感は、インパネやドアの内張りが乗員を囲むようにデザインされていることも関係しているのだろう。

運転席はレバー操作で上下に動き、最下位にしたときにはかなり低くなり、大男でも乗車可能。シート形状はなかなか良い。リアシートは、余裕は少ないけれどもきちんと座ることができる。荷室は側面がきれいに成型されているため、奥行きはあっても幅が狭い。ゴルフに行くのなら収納に苦労するだろうが、C-Classや3seriesよりは広い。私の愛用の釣竿はなんとか入るかもしれない。

Audiは、プレミアムブランドとして認識してもらうために細かいところまで仕上げを気にしている。ボンネット裏の吸音材やトランクリッド裏の内装材は当然として、室内のコイン入れ等の小物スペースには滑り止めのゴムが貼ってあったり、ドアポケットの内側は起毛の布が張ってあったりする。3seriesやC-Classと比べて、見える部分の高級感は一段上である。日本では戦略的な価格設定がなされていると思うので、2大プレミアムブランドに肩を並べるまで成長することを期待したい。

A4

Avant

1.8T

quattro

A4 Saloonで感じられた巌のようなボディの硬質感が、果たして剛性面で不利なAvantでも感じられるのかどうか、試してみた。

2004年夏休み最後の週末ということで、かなりの渋滞で低速度の試乗となった。したがって、路面からの大入力を受ける機会がほとんどなく、実のところ乗り味はあまりピンと来なかった。

上記のSaloon試乗時にはエンジン自体の音が気になったが、Avantでは排気音がやや大きく聞こえた。これはボディ形状の違い(リアフロアから音が侵入しやすい)によるものなのか、年式による変更点なのか分からない。とはいえ、スポーティモデルたる1.8Tにとって何ら問題のない程度の音量であった。

上記Saloonと同じエンジンなので動力性能はだいたい想像がついていたが、2年ぶりぐらいに乗ったので、再確認しておくことにした。2ndギアで交差点を曲がった後、かなり奥(キックダウンスイッチが作動する直前)までスロットルペダルを踏み込んで加速してみたところ、とても穏やかで相変わらずターボらしさが薄いエンジンであった。ターボが過給するときのパンチが弱く、NAよりもレスポンスは悪いので、エンジンに対して感銘を受けることはない。そろそろ2.0LのFSIターボを(A3のものを縦にして)載せてもいいのではないかと思う。

ATは比較的低速度でロックアップするようで、55km/h程度でも直結していることが感じられた。瞬間燃費計を見ながら走ってみたが、定常走行ではなかなか効率が良さそうに思える。

2004年型のA4は、内装にちょっと手抜きがあり、ドアポケットの内部はプラスチック成型そのままであり、上記Saloonとは異なっていた。見えないところで手を抜かないのがA4の良いところであると思っていたのだが、このようなトヨタ流のやり方には、興ざめしてしまった。

Dセグメントで圧倒的に上質で緻密に思えたA4であったが、MercedesのCクラスがどんどん改良を重ねていく間に仕上げ具合に差がみられなくなり、ついにはCクラスのほうがエレガントに見えるようになってしまった。Audiは新型A6に力を集中して、A4に力が入れられなかったのだと思われる。現行A4ではまだ大きい改良は一度も実施されていないので、次回、顔つき(グリル)が変わるとき、V型6気筒モデルには新A6用の3.2 FSIを載せ、直列4気筒高性能モデルにはA3用の2.0 FSIターボを縦置きにして、また、直列4気筒NAモデルにはすでにドイツでかなり前から存在する2.0 FSIをAT(またはCVT)と組み合わせて導入し、商品力アップを計ってもらいたい。

A3

2.0 FSI

SPORT

ドイツでは2003年春先に発売され、6月にはすでに田舎町でもたくさん見ることができるぐらい売れ行きは好調であった。どういう訳か知らないが、同じ車台を使う第5世代 VW GOLFよりも早く登場している。この車台はAudiが設計したのだろうか。

日本での発売は2003年9月からということであるが、8月に試乗車がすでに用意されていた。

SPORTというモデルは、225/45R17という立派なタイヤを装着している。このサイズは、A3の3.2L V6エンジン搭載車やALFA 147 GTAという250馬力クラスのクルマと同じであり、150馬力の普通のA3にはちょっと過剰な装備だと思う。スポーティモデルらしくエクセーヌ(アルカンターラ)の表皮をもつスポーツシートを備えるが、座面はやや小ぶりである。外装は何度もドイツで見ていたせいか、それほど新鮮味はないが、A4と同じように品質感は高い。内装もなかなか品の良い仕上がりになっている。なかでも、パネルのスイッチひとつひとつが同じようなクリック感を持っているのには驚いた。タッチがすごく分かりやすく、それを統一した感触にするとは、ものすごいコダワリを感じる。

エアコンは左右の吹出し温度が独立調整できるのが良い。温度調整のダイヤル(つまみ)は回転するものではなく、左右にクリックするだけであるが、なかなか面白いやり方である。室内ファンの音はそれなりで、あまり静かではなかった。

スロットルペダルはA4と同じオルガン式である。ATのセレクタをDに入れて走り出すと、ペダルの踏み込み量とスロットルの開き加減の関係がうまく、フィーリングが良かった。トランスミッションは最近VW-AUDIでよく使われるアイシン6段ATのTiptronicで、これはスムーズに変速が行われる優れものであった。手動変速をしてみても、変速ショックは殆どなく、タイムラグも小さかった。フルスロットルでの加速をしてみると、このATがかなりclose ratioのギアを持っていることが分かる。2nd ギアの守備範囲は80km/h弱で終わり、適度な回転数で 3rd ギアにバトンタッチする。2.0L直噴エンジンは150馬力で、しかも車重が1390kgもあるので速いわけではないが、小気味良い加速感を見せてくれる。ノーマルモードでのシフトアップポイントは、1st→2nd が6500rpm、2nd→3rd が6000rpmぐらいに設定されている。残念ながらスポーツモードでのシフトポイントは試す時間がなかった。

パワーステアリングは電動アシストと聞いたが、何の違和感もなかった。それどころか非常にスムーズで、A4よりも良いのではないかとさえ思った。路面状況も適度に感じられ、きわめて滑らかな操舵感は、新型A3の一番の魅力である。電動パワステの欠点は速い操舵時にみられるというが、今回はそういう操作をしていないので何ともいえない。

乗り心地は、45%扁平率の17インチというタイヤを履いている割に良かった。今回の試乗コースは路面が悪い部分があったので、突き上げを若干感じることがあったが、角の丸いショックなので、一般の人にとっても許容範囲かもしれない。これでダメという人はノーマル仕様(205/55R16タイヤ&ソフトなサスペンション)を試してみるとよいだろう。機会があれば私も試してみたい。

A3はこのクラスの中では質の良さを高く感じさせるクルマである。しかし、Audi車の中でA4より下のクラスに見せる必要があるため、ドアポケット内はプラスチック成型のまま残してあるし、電動シート調整もつかない(電動ランバーサポートは装備)。また、A4で感じられた圧倒的な剛性感、外界と遮断されたような感触も得られなかった。

今後、5ドア、3.2L Quattro、S3などが出てくるそうである。

TT

Coupe

3.2

quattro

535万円

旧型A3(すなわちGOLF W)をベースに作られたTT。これに新A3と同じVR6の3.2Lエンジン(GOLF W R32用の改良版)とDSGを搭載したのが今回乗ったモデルである。TTを運転するのは初めてである。

最近のAudiは外観で排気量の区別が難しい。新A3と同じようにTTも、3.2 quattroの外観は普通の1.8Tと変わらず、18インチホイールが目立つ程度。ドアを開けて乗り込んでみても同様の装備であり、シート調整は電動ではない。シート表皮はセンター部分がアルカンターラで、これは滑りにくくてよい。

DSGのシフトレバーは、通常のTiptronicと同様の装いで、PレンジからDレンジに入れると軽くクリープが発生する。そして、ゆっくり走った最初の50mぐらいは、TiptronicなのかDSGなのか判断しかねるフィーリングであった。なぜなら、トルコンロスの少ないA3の6段ATと似たフィーリングであったから。しかし、少しスロットルを多めに開いてよく観察してみると、スタートの瞬間に半クラッチのフィーリングがあり、加速感はまったく滑りがなくダイレクトであったので、DSGだと判断することができた。Dレンジでの加速には途切れ感やショックがまったくなく、タコメータを見ていても正確にシフトアップ&ダウンがされているのが感じられた。クラッチを切っている状態が認知できないダイレクトシフトを初めて経験して、とても感銘を受けた。これを知ってしまうと、NAVI-5流のロボットシフト(Selespeed, SMGなど)には乗りたくないと思う。

さて、お楽しみのカーブのある坂道での走行である。今日は珍しく邪魔が入らず、思うように走ることができた。DSGのセレクタをSレンジにして走ると、なかなかシフトアップせずに高回転を使ってくれる。そのため、マニュアルでの+−操作を特に要求されることはない。カーブの進入で左足ブレーキ(ペダルレイアウトは適切)を踏んで減速、ステアリングをスゥーっと90度ぐらい切ると、頭の入りがすごく鋭くて気持ちがいい。そして、適度に重いステアリングホイールからはガッシリとフロントタイヤが路面を掴んでいるのが感じられる。そして、ロール感は非常に少なく、スロットルを踏んでいっても安定した姿勢を保ってグイグイ曲がってくれる。僅かな時間であったが、とても楽しい思いをすることができた。

全開加速は2ndギアで試してみたが、250PS、32.6kgmのNAエンジンという性能なりの加速感であった。エンジンを高回転まで使った後のアイドリングでは、排気管での干渉があるのか分からないが、勇ましく感じられた、それが、発進して1000rpmを越えると途端に静かになるところは意外性があって面白かった。

今回、TTに乗って驚きの連続であった。ロールの少なさと乗り心地の良さの高いバランス、フロントタイヤのしっかり感、DSGのウルトラスムーズな変速など、このクルマには魅力的なところが多い。それらはいたってクールな振る舞いなのであるが、アイドリング時の排気音だけがわずかに異彩を放つというのが心憎い演出ポイントである。

店からの帰り道、私のインプレッサの乗り味はいったい何なんだろうと考え込んだ。ビシバシと路面の変化を拾って車体の上下動が激しいのにロール感は大きく、フロントタイヤのダイレクト感も薄い。筋の通った何かの存在がまったくなく、バラバラなのである。タイヤやブッシュも含め、全体を見直す必要があるのかもしれない。

 

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