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ROVER   MG

ROVER 75

TOURER

2.5 V6

425万円

ROVERとMGが3年ぶりに日本に帰ってきた。

2003年6月にイギリスに行った時、Rover 75をよく見かけたが、そのときは「まだこんなクルマが走っているんだ」という感想を抱いた。日本では忘れ去られたクルマだったからである。しかし、実は今でも作られていたのであった。

75は外装、内装ともJaguarに何となく似た雰囲気を持っていて、英国車らしいところが魅力的である。しかし、今までRover車には触れたことがなかったので、大阪の正規販売店で試乗してみることにした。

内装は革シートと木/革のステアリングホイールが高級そうに見えるが、それ以外は意外に大したことがない。木目に見えるパネルはプラスチック(昔は本木目だったが、変更を受けたらしい)だし、スイッチ類の感触や見た目はあまり誉められるものではない。

走り出してみると、スロットルペダル操作に対するスロットルバルブの開き方が穏やかなセッティングで、ちょっと踏んだだけでは動こうとしない。これは日本車とは正反対の設定で良い方向性ではあるものの、やや度が過ぎている。JATCOのATの反応も含めて鈍くさいと思ってしまう。もちろん踏めばそれなりの加速はするのであるが。。。

信号からの発進でフルスロットルにしてみると、なかなか伸びのある加速感を見せてくれる。2nd ギアで全力加速中に溝のふた(グレーチング)を横切った際、ジャンプしそうになった。タイヤの接地が薄くなった途端にトラクションコントロールが介入した(という表示がメーターパネル内に現れた)が、スリップを感じることもなく加速も衰えず、かなりマナーの良いコントロールがなされているのが分かった。

2.5LのV6エンジンは、加速中に音を聞かせるタイプで雰囲気は良い。これをやかましいと思う人がいることは否定しない。巡航中は静かになり、ATの5段め(TOP)ギアでは2200rpmぐらいで100km/hになる。ロックアップクラッチは5thギアで約80km/h以上で結合されるが、そこから速度が下がって4th ギアに落ちても、ロックアップ制御は維持されていた。

ステアリングの操作感は重めで、路面の感触を適度に伝えてくるものであり、フィーリングは良かった。脚の動きも良く、シートもソフトに身体を支えてくれるので、快適なドライブができる。17インチタイヤもその存在を誇示せず、無理なく履きこなしていると感じられた。

問題点は、ブレーキペダルを踏む足がステアリングシャフトのカバーに当たることである。ペダル類の上方に余裕がなく、アクセルからブレーキに踏みかえる際にプラスチックのカバーに足が触れてしまうのである。ブレーキペダルを踏み外すことはないと思うが、どうも引っかかるのは精神衛生上よくない。26cmの靴でこういうことが起こるので、最近の大きい足の人には運転できないのではないだろうか。また、カップホルダーの使い勝手が悪い。前席では、ATのシフトレバー前方のパネルから飛び出す仕掛けになっているが、乗員の膝にまともにぶつかる位置にそれは現れる。そういう不良設計なので、運転席側には当初設定されていたものが廃止されている。理由は、「たびたび壊れるから」だという。実験段階で当然分かる話である。後席では、センターアームレスト内にそれらしいものがあるが、穴の深さが数mmしかないため、振動によって簡単にドリンクが動いてしまいそうである。なんとも不思議な設定である(もしかしたら初期型にはなく、途中で無理やり追加したのかも)。

BMWの傘下にあった時代に開発されたRover 75には、サスペンションの設計にBMWの影が見て取れる。割合にしっかりと走るのは、そういうベースがあるからだろうと思うが、400万円でこのクルマを買う人はあまり多くないと想像する。他人と違うクルマに乗りたい人、英国車が好きな人ぐらいか。

MG ZT

2.5 V6

425万円

ZTは基本的にROVER 75と同じクルマで、スポーティなイメージを演出したグレードである。ボディ補強、エアロパーツ、サスペンション設定、タイヤ・ホイール、シート等が主な違いで、ATのシフトスケジュールも見直されているらしい。

運転席に座ってみると、目の前には75と同じ形状のダッシュパネルが存在するが、表面の材質が異なるため印象は大きく違う。シートはアルカンターラ張りの硬めのスポーティタイプで、サイドサポートは大きく、体をしっかり保持してくれるので運転しやすい。ただ、400万円のクルマなのにシート調整機構が手動式になるというのは、ちょっと手抜きではないかと思う。

試乗は雨の中、箕面の山へと向かった。久しぶりにお猿に会うため…

道幅の狭い山坂道では大きいボディを持て余すかと心配していたのだが、それは杞憂に終わった。車両感覚が分かり易いので、すれ違い時に左に寄せることは簡単にできた。

ステアリングを忙しく左右に回し、スロットルを小刻みに操作していくうちに、このクルマは日本の狭く険しいワインディングロードに向いていないと感じるようになった。ステアリングに伝わる情報が少なく、しかもクルマが重い印象を受けたのである。舵角がステアリング上で左右それぞれ90度までで走る道なら楽しく運転できると思う。

濡れた路面でのトラクション性能を確認するため、上り勾配のカーブで2ndギア全開加速をしながらセンターラインを踏んでみた。するとTRCの警告ランプが点灯して注意を促してきた。ステアリングホイールにも一瞬タイヤが滑った感触が伝わってきたが、過剰な駆動力だけを上手にカットして、前進を阻むような無粋なことはしなかった。

山道を下っていると、ATのアダプティブ制御が作動してシフトダウンが予想以上に行われ、スロットルを開けないと速度が維持できないという状態になった。MTに慣れた身にはお節介だと感じてしまう。ダウンシフトは運転手に任せてもらいたい。

225/45R18という幅広の大きいタイヤを履くスポーティな外観のZTは、フワフワではない適度な硬さの乗り味をもった静かなファミリーカーであった。MGはスポーティというのはあくまでもイメージ上のもので、期待しすぎるのはよくない。ROVER 75はお年寄り向け、ZTは40歳以上の気持ちが若い人に合うような気がする。

 

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