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タイヤラベリング制度について
低燃費タイヤが流行り始めた頃、ウェット性能の貧弱さが問題になった。 転がり抵抗を低減させると、ウェット性能も低下したのであった。「そんなの当たり前じゃん」と思われていたが、低燃費タイヤのせいで事故が増えたら困るのだ。 それぞれの性能をグレード別に表示するタイヤラベリング制度が施行され、各タイヤメーカーは相反すると考えられてきたものを高いバランスで実現しようと競争した結果、転がり抵抗が小さくてウェットグリップ性能に長けたタイヤが販売されるようになった。 客観的な指標があると、技術の水準が飛躍的に高まるのかもしれない。 2012年発売のPROXES T1 Sportのラベリングは「C/b」となっている。トーヨータイヤの中では雨のアウトバーンを超高速で走ることができるタイヤという扱いになっていると思うのだが、それでもウェットグリップ性能は「b」に過ぎない。 では、このa,b,c,dの基準は何によるものなのだろう。 ちょっと調べてみると、次のようなテストの結果であることが分かった。 水深は1.0±0.5 mm、ABSを搭載した乗用車で、ABSシステムを4輪同時に作動させる為に充分なブレーキを踏み、初速80km/hから終速20km/hまでの平均減速度を計算する。 基準となるタイヤに対して、テストしたタイヤが記録した減速度(G)の大きさ(%)で等級を決める。
水深1ミリメートルという設定は、やや強い雨の日を想定したものであろう。アスファルトの表面が濡れている程度ならドライグリップの良いゴム質を持ったタイヤが強そうだが、わずか1ミリメートルでも水膜がある状態では接地面できちんと排水ができていなければグリップ性能を確保することが困難であろうと想像できる。 トーヨータイヤの中で比較してみると、プレミアムスポーツに分類されるT1 Sportは、低燃費タイヤに分類されるNanoEnergy 0よりもラベリング制度で取り上げられる両方の性能で見劣りするのである。これはもの凄いことだと思う。 純正タイヤを履いた2代目プリウスは豪雨の高速道路でまともに走らなかったが、NanoEnergy 0を履いていたら、何の問題もないのかもしれない。 |
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トーヨータイヤ製品の中での相対的なタイヤパフォーマンスの表示(■の数で示す)では、ラベリング制度とは別に実走行で遭遇するであろう様々な環境下での総合的な性能を測っていると思われるため、少しイメージが変わる。例えばウェット性能という指標においては、テスト環境は水深5ミリメートルであったり、時速150km巡航であったり、時速100kmでハンドルを切った状態であったりするのだろう<想像>。そうなるとNanoEnergy 0にT1 Sportは迫るが、それでもまだNanoEnergy 0が優るというのが凄い。 |
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PROXES T1 Sport |
NanoEnergy 0 |
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NanoEnergy 0というタイヤはドライ性能もなかなかのものであり、スポーティタイヤに分類されるDRBと同じドライパフォーマンスとなっている。これまた凄い。 NanoEnergy 0は早く減るのかもしれないが、総合力はかなり高い。また、そのシリーズには0のほかに1,2,3というのもあり、それらには得手不得手が存在する。 ポルシェユーザーの間で評価が高いPROXES 1を作っているトーヨータイヤは、なかなか高い技術を持っているようだ。 しかしながら、製造コストとの兼ね合いでNanoEnergy 0とPROXES 1以外の製品には欠点を残さざるを得ないのだろう。
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