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2速発進

朝早くから半クラッチでエンジンを唸らせて発進する新聞配達のバイク。

なぜ2速発進なのか???

まあ、足の手間を省きたいのは分からなくもない。また、湿式クラッチなので、すぐに不具合が起こることもないのだが、3〜4秒もの間、クラッチが完全に締結しないままで走らせることに対して、不安を抱かないものなのか???

クラッチがやっと繋がったと思ったら、直後に停車するという乗り方なので、配達エリアにおいては殆どの場面を半クラッチで走行していることになる。

1速ギアが低いので、下手に変速するとショックが出て嫌なものだが・・・

坂道発進に対応するため、1速のギア比を高くすることもできない。それなら、2速を低くして繋がりを良くする方向にしてはどうか。結果的に2速と3速が離れてしまってもいいじゃないか。

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ここからが本題である。

軽トラで2速発進という記事を見つけたので、車両の諸元を見てみると、なかなか面白いことが判った。

今回取り上げる車両は、鈴木/三菱のエブリイ/ミニキャブである。

右のような電気スイッチが備わることから分かるように、車両は自動MT(クラッチペダルのない)仕様のトランスミッションを備えたモデルである。

http://www.suzuki.co.jp/release/a/2015/0310/

http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/products/2016/news/detail4965.html

こんなスイッチがあるということから、運転手自ら1速発進か2速発進を選ぶことになるが、自動変速なのだから、1速で出ても2速で出ても、どちらでもいいじゃないか。

単純に考えてしまうところであるが、自動MTはクラッチを切っている間につんのめり感が発生するので、快適性を考えると、できるだけ変速回数を減らしたいという思いもある。

そうはいっても、軽トラは空荷のときに2速発進をしても大丈夫なのか。

私は昔、サンバーで荷物を運んでいたとき、軽荷であっても1速で発進していたものだが・・・誰かが2速発進を多用していたのか、私が乗務して間もなくクラッチが滑りだした。

とりあえずギア比を確認してみよう。比較対照はアルトワークスとした。

  EVERY/MINICAB
AGS/AMT
EVERY/MINICAB
MT
ALTO WORKS
AGS
ALTO WORKS
MT
第1速 5.809(29.77) 5.106(24.39) 3.818(17.96) 3.545(16.68)
第2速 3.433(17.59) 3.017(14.41) 2.277(10.71) 2.105(9.90)
最終減速比 5.125 4.777 4.705 4.705
タイヤ径 541mm 541mm 563mm 563mm

( )内の数字はオーバーオール(最終減速比×トランスミッションのギア比

   

この表から分かることは、エブリイの2速(AGS)はアルトワークスの1速(AGS)とほぼ同じギア比であるということだ。

車両重量はエブリイ850kg、アルトワークス690kgと大きな差があるが、タイヤ径を考え合わせると、エブリイが空荷のときは2速発進でも良さそうだ。

さらに表から見えるものは、自動MT(AGS/AMT)仕様のトランスミッションのギア比がMT仕様よりも低いということである。

なぜ、そんな設定にしてあるのか。

それは、自動MT仕様ではクラッチ締結時のエンジン回転数やペダルの操作の微妙な加減ができないからであろう。

人が操作するMTなら、急坂での発進時にはエンジン回転数を高めて半クラッチの時間を長く取ることができるが、コンピュータで定められた自動MT仕様ではいついかなる場合でも2000rpm(仮定)でクラッチを繋ぎにいくので、MTと同じギア比ではフル積載時に急坂発進できない可能性が出てくるのだ。

350kgの荷物(または4名乗車+250kgの荷物)を積んで急坂発進ができるように1速のギア比を設定すると、空荷のときには1速発進など低すぎてやっていられないということになり、2速発進という選択肢を用意したのであろう。

なお、MT仕様ではギア比がやや高いので、クラッチの消耗を考えると、空荷でも1速で少し動かしてから2速に入れるのが良いと思う。ただ、ハスラーのMT仕様を思い出すと、1速の使用時間はとても短く、変速操作が忙しくなるのは想像に難くない。

  EVERY/MINICAB
MT
HUSTLER
MT
第1速 5.106(24.39) 4.300(21.23)
第2速 3.017(14.41) 2.470(12.19)
最終減速比 4.777 4.937
タイヤ径 541mm 579mm

 

 

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