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Mercedes-Benz

B200

CVT

330万円(税抜)

Bクラスを初めて目にしたのは2005年10月、場所はフランクフルト空港だった。一瞥しただけではAクラスが置いてあるのかと思ったのだが、時間があったので近寄って見てみると、それは伸びやかになったボディを持つBクラスであった。外装には手を加えられたことが窺えたが、内装には差異を見つけることができなかった。

日本での発表会は2006年2月に開催されたので、Aクラスとの違いを確認してみた。

AクラスとBクラスがともに展示されていたので見比べてみると、外見の違いは意外に大きいと感じた。まずは前の方を見てみると、Aクラスはフロントガラスの傾斜がそのままボンネットに流れ落ちて行くデザインで、凝縮感のある形を強く意識したものである。Bクラスはボンネットが普通の乗用車のように水平に近い角度で前に長く突き出して伸びやかさを演出し、さらに大きいグリルが迫り出して存在感を高めている。フェンダの造形もダイナミックさを強調している。後ろの方を見てみると、Aクラスのリアゲートの角度は垂直に近く、無駄な空間は排除すべきという姿勢が見えるが、Bクラスはやや角度が付いており伸びやかなデザインを大事にしている。Bクラスのリアのコンビランプは横長になり、Aクラスのように車体が腰高に見えるのを上手に回避している。

車体寸法を比べると、Bクラスは全長が42cm、ホイールベースが21cmも長い。しかし後席足元は3cmしか増えていない。残りはどこに行ったのか? もちろん車体のデザインと荷室に利用されたのである。荷室の奥行きは15cmほど増えて80cmぐらいになり、使い勝手が良くなっている。

室内はAクラスと異なる部分を見つけるのに苦労する。ステアリングホイールのデザインが別になる以外に差別化はされていないと思う。

では、実際に試乗車のB200に乗ってみよう。

床板の高さ、着座した時の姿勢、サイドミラーの像の見にくさなど、すべてAクラスと同じであり、運転席ではステアリングホイール以外に違いは見つけられなかった。

動かしてみると、静かに穏やかに走る性質はAクラスと同じであったが、改良された点も感じられた。パワーステアリングが自然な操作感になり、また、突起を越える時の乗り心地が落ち着いていたのである。電動パワステはまだまだ改良される技術であるので、新しい分だけ良くなっているということなのだろう。市街地走行中のハンドルの重さがかなり軽減され、極低速時とかけ離れた感触を見せることがなくなったことは好印象であった。乗り心地の良さはホイールベースの長さと重量増(+70kg)から得られる恩恵だろう。

片側2車線の道路でUターンを試みた(3車線を使った)ところ、全然曲がりきれなかった。長いホイールベースとFWDという機構ゆえ、小回りが利かないのは想像できたが、最小回転半径5.6mというのはコンパクトカーにとって相応しいものではない。Aクラスよりも標準タイヤの幅を広くしてしまったため、タイヤ自体の切れ角が制限されてしまったというのが問題である。

B200のエンジンは2034ccである。スロットルを深く踏み込んでA170と動力性能を比べてみると、重量増を感じさせない力強さを感じることができた。一般的な2.0Lのクルマと比べて特に速いわけではないが、A170のように力不足を頻繁に感じる場面に遭遇することは少ないだろう。これはライバルのGOLF5でも感じられ、1.6では足りないが2.0では概ね不満がないというのと同じである。2034ccのB200(A200)は、巷の2.5Lと同じ税金を払わねばならないのが少々気になる。

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今回は試乗目当ての来客がとても多かったのでBクラスはチョイ乗りしかできなかったが、Aクラスより改善されたところは感じられた。AクラスとBクラスの価格差は35〜45万円とあまり大きくなく、ほとんど同じクルマではある。

では、どんな客がBクラスを買うのだろう。

Bクラスの属するCセグメントは最も競争が激しく、ライバルはGOLF5、A3、ASTRA、MEGANE、307、C4、147、1erなどが挙げられる。その中でBクラスを選ぶ人とは、まずはMercedes党であることが最低条件である。いや、ベンツ党と呼ぶほうが適切かもしれない。VWのマークが付いたクルマなど恥ずかしくて乗っていられない類の人である。その中でコンパクトカーが欲しいという人は往々にしてAクラスなど小さすぎて押し出し感がないので恥ずかしいと言う。果たしてBクラスはそういう人のために生み出されたクルマだと言える。

そう考えると、BクラスはAクラスを超えるヒットを飛ばす可能性を秘めている。

Bクラスは、基本設計をAクラスと同じくする単なるストレッチ版である。主要部品(エンジン、トランスミッション)を共有でき、開発費も安くできるので、MBにとっては儲けの大きい商品となろう。

B170

SPORT PACKAGE

CVT

ノーマル仕様は285万円(税抜)

店頭の車両がB170に入れ替わったので乗ってみることにした。B170の車両重量はB200より10kgだけ軽い。

この試乗車はスポーツパッケージというオプション(18万円)を含んだもので、215/45R17というタイヤと10mmローダウンのスポーツサスペンションを備えていた。

B200の標準タイヤと今回の試乗車のタイヤサイズが同じであるので、まずは両車で脚の設定がどのように違うのか確認してみた。一見するときれいな舗装がなされた道を50〜60km/hで走ってみると、目には見えないちょっとした路面の不整に応じてB170は上屋がヒョコヒョコと落ち着かない動きを続けることが分かった。これはまるでVitzのようなフィーリングといえる。そして、低速でグレーチング(溝の蓋)を通過した際には割りと強い衝撃が乗員に伝わってきた。総走行距離が300kmに満たないクルマであったため、まだ脚の動きが渋かったのかもしれないが、標準サス仕様のB200と比べると、スポーツサス仕様のB170はかなり硬い乗り味(微小入力で動かない脚)であった。好みの問題であるが、これはちょっとMBらしくない。

ステアリングの操舵力はB200と同様、A170より軽くなって違和感が解消した。状況に応じてアシスト量を大きく変えられるのが電動パワステの特徴であるが、それをあまり顕著に出し過ぎると不自然になるということをAクラスで学習し、Bクラスで修正を加えたということだろう。

CVT設定をS(Standard)にしてフルスロットルを試みたところ、加速感はかなり穏やかであった。A170と比べて遅いのかどうか記憶が曖昧なため断定できないが、直近に乗ったプリウスより遅いのは明らかであった(A170はプリウスより少し遅いだけだったので、やはりB170は重さの分だけ不利だと思う)。フルスロットルでの加速に何のためらいも要らないというのはちょっと面白味に欠ける。

試乗から戻ってブレーキローターを見てみると、フロントはきれいに磨かれていたが、リアは新品に存在する機械加工のざらついた表面が残っていた。すでに300km近い距離をメーターが刻んでいるのにこんな状態であるのはとても奇妙である。ブレーキバランスがフロントに寄り過ぎていて、リアブレーキをほとんど使っていないということが窺い知れた。

B170はB200と比べて動力性能がかなり劣るので、ちょっと安いというだけで安易に選んでしまうと後悔するかもしれない。買う前には必ず乗り比べるほうがいい。また、スポーツサスを選ぶか否かにも注意すべきである。特にB200は無償でスポーツサスに変更できるので、気をつける必要がある。

 

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